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高齢者の安全な自動車運転継続のために

研究報告 高齢者の安全な自動車運転継続のために

「認知機能の低下した高齢ドライバーと家族の支援プログラム」研究成果報告

はじめに

公共交通機関の少ない地域に住んでいる人々にとって、自動車やバイクは自立した生活に欠かせない交通手段です。しかし、高齢者の免許保有率が増加する中、高齢ドライバーの交通事故が増加していることが社会問題になっています。高齢者は交通弱者であると同時に、自らの運転で家族・知人・他人にけがを負わせ、命を奪う加害者になる可能性があるのです。できるだけ長く安全運転を続けるとともに、公共安全を脅かす存在になる前に、車・バイクに頼らない生活へと切り替える必要があります。
また、運転中止後の生活には社会的サポートが必要です。高齢者にかかわる専門職や地域住民が認知している問題意識を共有するところから、地域特性に応じた福祉サービスの活用や支援体制のヒントが得られると考えます。

このホームページは、認知機能の低下した高齢ドライバーと家族の支援に取り組んできたチームによる研究成果を一般の方に役立てていただく目的で作成しました。高齢ドライバーの安全運転継続のためにお役に立つことができれば幸いです。

(日本学術振興会科学研究費助成No.21592866)

ホームページ中に紹介した調査・研究の概要

自動車運転に関する高齢者の認識についてのアンケート調査(調査A)

A町の老人クラブに依頼し、支部長を通じてご協力いただいた207人の回答を集計した。調査は平成22年11月に自記式質問紙調査法で実施した。回答者の平均年齢は74.8±5.2歳、男性60.4%、女性39.6%。現在運転中は143人(男性70.6%、女性29.4%)であった。

高齢者の自動車運転に関する民生委員とケアマネジャーの認識についてのアンケート調査(調査B)

A町の民生委員と町内事業所のケアマネジャーを対象に平成22年9月に自記式質問紙調査を実施した。民生委員41人(平均年齢67歳)とケアマネジャー20人(25歳から49歳)から回答を得た。

初期認知症者の自動車運転中止の過程と家族支援に関する研究(調査C)

大学病院精神神経科を受診し、自動車の運転中止を勧告された初期認知症者とその家族介護者13組を対象に半構造化面接や相談支援を通じて得られた情報を質的に分析した。対象者は男性11名と女性2名で、平均年齢は71.3歳、アルツハイマー病9名と前頭側頭葉変性症4名、重症度(Clinical Dementia Rating)はごく軽度(CDR0.5)9名と軽度(CDR1)4名、認知機能評価(Mini-Mental State Examination)は平均19.3(±5.5)であった。研究期間は平成15年10月~20年2月で、厚労科研(代表:池田学、H15-長寿-032)の分担研究として実施した。

文献や現地調査による諸外国の現状調査(調査D)

インターネット検索による分析

政府や国民の認知症への関心が高い英語圏の4カ国(アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア)を対象とし、信頼性の高いホームページから、法律、認知症ドライバーの運転適否の評価方法、運転制限、サポート体制等の情報を収集し分析した。

現地調査

平成21年8月、オーストラリアのアデレード市において、アルツハイマー病協会サウス・オーストラリア支所の作業療法士や在宅ケア担当者ら6名と意見交換し、情報を分析した。

文献調査

認知症患者またはアルツハイマー病患者の運転の危険性に対する適切な評価方法と、運転を中止した場合の社会的サポート体制について、PubMed、Medline、PsycINFOの文献データベースを使用し、原著論文28件を調査した。

平成21~23年度科学研究費補助金基盤研究C
「認知機能の低下した高齢ドライバーと家族の支援プログラムの開発」研究結果