更新日:2017年6月12日

情報発信コンテンツ

自著を語る

本学教員執筆の資料を、執筆された先生自身により紹介していただきました。
紹介の資料は図書館に所蔵していますので、ぜひ手に取ってみてください。
所属や役職等は掲載時のものになります。

臨床検査学科学科長・則松良明先生(愛媛県立医療技術大学教授)

子宮内膜細胞診アトラス - ヨコハマシステム準拠 (第2版)

平井康夫/総編集
則松良明,矢納研二/編
医学書院(2022/06)

最近米国からの報告で、子宮体癌(子宮内膜癌)の罹患と肥満の蔓延や特に若い年代における発生などから、今後数年内に重要な公衆衛生上の問題が起こると指摘されました。これまで、細胞判定の難しさの議論に集中していた「子宮内膜細胞診」は、著者らの研究グループの成果により、より普遍的な判定や報告様式の標準化が進み、 2016年に横浜で開催された、第19回国際細胞学会「子宮内膜シンポジウム」を契機に、The Yokohama System(TYS)分類として国際的合意が交わされ、ここに大きな一歩を踏み出すこととなりました。

本書が子宮内膜細胞診の標準的アトラスとして、細胞診断判定に携わる人々の座右の書として活用されることを願うとともに、臨床の場では、「TYS子宮内膜細胞診報告様式」の結果報告に沿った標準的な臨床的取扱いの選択基準として大きな力を発揮することを期待します。

看護学科・小嶋理恵子先生(愛媛県立医療技術大学准教授)
書影 少子化社会と妊娠・出産・子育て
由井秀樹/編著
小嶋理恵子[ほか]/著
北樹出版
2017年4月
この本は、少子化が喫緊の課題として認識されている今日、妊娠・出産・子育てに関する問題を、保健師、助産師などの看護職と、家族社会学、医療社会学、ジェンダー、生命倫理学の分野の研究者等が集まって作成しました。第1章は、「妊娠先行型結婚」についてです。1960年の読売新聞の「人生案内」に取り上げられた悩み相談について紹介しています。
その内容は現在「授かり婚」と言われている「できちゃった婚」についての悩みであり、籍を入れる前に、こんな大問題を起こして、婚約をゆるしてくれた両親や媒酌人に申し訳ない。恩を仇で返す結果となり二人で悩んでいるという投稿があったことを紹介しています。
この本では、今と昔の結婚観の違いを学ぶことで、看護の対象となる人たちの価値観に、敏感にならなければならないということに気づくことが出来ました。
この本で、私は、コラム「第2子以降の子育てをしている母親のケアニーズ」について説明しています。例えば、第一子を生んだ多くの夫婦が直面することは、自分の親、または夫の親から「2人目はどうするの?産むの?産まないの?」いった問いかけです。しかし、核家族が多い今日、実際に産むとなると、様々な課題が出てきます。例えば、保育園の送迎は誰がするのか、子供に熱が出たら、どちらが仕事を休むのかといった「夫婦間役割の再調整」であったり、「祖父母などからもサポートを得る体制」をあらかじめ準備することが重要になります。また、上の子にとっては、新しく生まれてくる子供は、自分の親を取られたと思い、自分に関心を向けてほしいために、わざと、親の注目をひく行動(赤ちゃん返り)をすることもあります。私自身も、親にかまって欲しくて問題行動を起こしていたようです。私が起こした問題行動は、弟が飲んでいるミルクが入った哺乳瓶を取って全部飲み干して弟の口に空の哺乳瓶をくわえさせるという行動でした。この行動に悩んだ両親は、私がいるときには、哺乳瓶を2つ用意したと後から聞きました。そして、看護の教員になった時、「第2子以降の出産を迎える家族のニーズ」という論文を執筆しました。教員になって改めて親の方に話を聞くと、核家族の場合は、子育ての分担することも難しい場合があるということも理解できました。綱渡りでの子育てで、また、初めての出産のときに感じる問題と、第2子以降の出産・子育てと際に感じる問題の質が違うことも明らかになりました。その後、出産準備教室のマニュアル本でも、第2子以降の子供を持つ親の出産準備教室の運営のポイントなどを記された本も出てきました。少子化の中で、これまでの母親モデルではとらえきれない対象者と出会うこともあるかと思います。その時には、対象者の価値観を理解しようとする態度が必要なのではないかと考えています。また、学生に対しては、親になる人の気持ちや、上の子の気持ちなどを理解できるように、図書館と連携して、親になる人向けの絵本、兄・姉になる子供のための絵本を使って、上の子の気持ちや親になる人の気持ちについて考える講義を行っています。
看護学科・窪田静先生(愛媛県立医療技術大学准教授)
書影 て・あーてと福祉用具を活用したある地方病院の取り組み・全3巻
川嶋みどり/監修
窪田静/監修
東京シネ・ビデオ株式会社/企画・制作・著作
2017年

福祉用具は、「寝たきり老人がいない国」デンマークと「寝たきり大国、二次障害大国」日本の大きな違いの一つです。30年前にそれを識り、私はデンマークから日本への福祉用具導入、助成制度創設、使用技術開発と啓発に努めてきました。しかしそれは在宅ケア主軸の実践に留まり、病院の看護現場は途方もなく遅れたままであること...学生を臨床に送り出す教員という立場になった時、この事実に直面させられました。在宅看護論の授業で教授するリフトやスライディングシートが、学生達が就職する病院にはほとんど存在しないのです。
福祉用具を使わず患者を持ち上げる看護が、腰痛による離職と莫大な労災補償を生んでいることに対し、欧米豪の看護師職能集団は様々なアクションを起こし、法改正まで実現してきました。また福祉用具を使わない看護が患者を引き摺り、局所に強い力をかけざるを得ないこと、患者の皮膚や運動器を損傷させることも重大視されています。同時に移動や移乗をしない「寝かせきり」は虐待であると認識されているため、リフトは水道に匹敵し、「感染対策」と同等の重みを持って遵守されているのです。しかし日本で腰痛は「職業病」=解決策の無い宿命であるか、「技術不足」=個人の資質の問題という認識に留まっているのです。
このDVDはそんな日本の現状を打開する一つの鍵を示したと言えるでしょう。全3巻の構成は、「患者の治る力を引き出す」「福祉用具を活用し、仲間が辞めない職場づくり」「患者の生きる力を引き出す」です。看護に真摯に向き合ってきた看護師集団が、私が講師を務めた川嶋みどり先生のて・あーて塾「ポジショニング」編で福祉用具と出逢い、福祉用具は患者と看護師を遠ざけるものではないこと。むしろより近くするための必需品であること」「看護師が疲弊せず、看護を取り戻し、実践し続けていくのに不可欠であること」に気付きました。その結果看護は、リハは、病院はどう変わったか? ありのままの3日間を撮影したDVDにはこんな声があふれています。

☆身体を乗せてもスルスル動かせる、摩擦の低い布でできた【スライディングマットでストレッチャーから浴槽やレントゲンの台へ移乗。【ボード】や【リフト】でベッドから車いすへ移乗。病棟に響いていた"せーの!"のかけ声が消えました。
☆バラバラになりそうだった身体が癒された。身体をこわして辞める仲間がいなくなった。
☆バランスの悪い患者を、後ろから支える必要が無い【背面開放座位保持具】は、。患者の顔を見ながらケアできるし、片側に倒れていく症状も改善していく。
☆【スライディングシート】を用いると、腹臥位療法(顕著な酸素化等様々な効果をもたらす)がスムーズに実践できる。
☆【リフト】で吊り下げた患者は、筋緊張がゆるみ、硬く屈曲した膝が揺れ始め、喉のゼロゼロまで落ち着いていく。
☆リフトを使って初めて歩行訓練が可能になった重度四肢麻痺の患者。それまでは、できないことばかり体験していた。リフト歩行は患者の生きる力を引き出した。
☆入院中使っていた福祉用具を家で使えば安心。病院でリフトやスライディングシートが当たり前に使われるようになれば、在宅移行支援が変わる。

日本の病院が変わっていくこと、卒業生が希望を持って病院で働き続けられるようになることを願い、川嶋みどり先生とともに監修し、解説いたしました。

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